2011年2月4日金曜日

地域産業振興に設定されたハードルは結構高い

今週は講演を聞く機会が何度かあった。
月曜日には岐阜県工業会新年会(ここは1月最終週に新年会を行う)にて中部経済産業局長による「中部地域の産業の展望と課題」。
水曜日には科学技術振興機構(JST)の「地域結集型総合会議 Final」と銘打ち、同事業のこれまでの全国各地からの報告など。

中部経産局長の講演は、リーマンショック以後の回復状況についてや現在の中部地域の分析があったりと非常に面白い内容。
その上で、今後の中部の生きる道として次世代自動車やスマートグリッド、航空宇宙産業とそこに付随する多様なサービス分野などの提示が。
内容自体は以前から示されているものであり規定路線だが、改めてこれは中部の特に中小企業にはなかなかにハードルの高い内容だなと感じた次第。

中部地域の産業は輸送機械、つまりは自動車製造に長い時間をかけて特化されてきたという経緯がある。
ひとえにそこにはトヨタ自動車のおかげの部分があり、中小企業もその分け前を与えられてきた。
こうして製造業、ものづくりを金科玉条として、現在の企業群の集積が出来上がっている。

ところが上記の新産業に企業が進出するに際し、ものづくりだけではない課題が転がっている。
技術の使われ方、ノウハウといった部分もものと一緒に創出する必要が出てきている。
そこに現在のものづくり企業が容易に移行できるのかというといささか怪しい。
仕様書の通りに作る、というところから前進せねばいけないということであり。
中部局の示す道筋は明解。
ただその道筋をたどる企業側の体力や能力がどの程度ついていけるのかということではかなり不安が残る。
これらはロボットの置かれた状況とも良く似ている。
技術に付け加えるものが必要になってきているということが企業側に求められている。

水曜日にはJSTの発表を聞いていてよりその思いを強めることとなる。
そこで知ったのは、JSTが「地域結集型」というプロジェクトを立ち上げた15年ほど前には、まだ産官学連携という考えはそれほどメジャーとは言い難かったとの発言が続いたこと。
早稲田でも産学連携の仕組みが整えられたのは90年代頭と記憶している。
地方自治体と地方の国立(とは限らぬのだが現実には主にそういうことになる)大学と企業との連携というのはそう古いものではないのだ。

発表後のJSTの理事の総評でも言われていたが、地域の中の課題解決に取り組む事例や、まったく地域との縁のないテーマを選んだりという多様なテーマ設定と取り組みがあったという。
手探りでこの十数年が過ぎたということなのだろう。
JSTでは研究着手から5年での商品化を想定していたというが、全国各地からの声で多かったのは「5年では無理」との発言。
それはそうだ、研究の可能性として存在しているものがビジネスになるまでには5年というスパンはむしろ大変短い。
だが会場でのJST側関係者の発言にもあったが、大学の研究者への意識改革を促す作用があったことは明らかである。

では、企業はどうか。
自治体が仕掛け、大学が主たるプレーヤーになっている中で、正直言えばやや影が薄いところがあった。
産業化の道筋は企業側が先を見通してもらうのが本来なのだろうが、大学の研究成果ありきというところは大きく、産官学連携がまだまだ途上であることを再確認する場ともなった。
企業側が大学の成果をどう咀嚼してくれるか、がこの先のハードルになってゆくのだろう。
立ち位置の違う意見は貴重だが、役所に期待された役割を担っている以上の活動が企業にどうできるか。
現状は随分とそのハードルは高いのだな、というのが正直な感想でもある。

そして会場では事業仕分けでこのプロジェクトが終了したことについて恨み節があちこちで聞かれたが、この先の中心となる担い手が企業であると考えれば、分からないこともないなとも感じた次第。

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